なのメイド、なの!Episode9〜ヴィータちゃん怒ります、なの〜

「いっ!」
目をひん剥くなんて初めて経験したような気がする。あたしの部屋という空間の狭さや人の少なさで今まであんまり気にしたことはなかったけど、元々容姿において目立つなのはがメイド服と言う服装を着てれば余計に目立つのは至極当たり前のことだった。だけど多分なのははそんな周りの目をまったく気にしてない。
「え、えーとヴィータ副隊長、その…」
あたしの態度を見たティアナが申し訳なさそうに聞くが、言葉に詰まるようだ。そりゃそうだ。はやてやフェイトと違ってなのはとの付き合いがそんなに長くないフォワード陣4人にとってまさかなのはがあんな姿で登場するなんて思いもしなかっただろう。付き合いの長いあたしでさえこんな感じなんだからな。
「あー、あのよ…あ、後で説明すっから!」
あたしは椅子から飛び降りると、全力でなのはの元へかけて行った。後ろでスバルの「ヴィ、ヴィータ副隊長ー!どういうことなんですかー!」って言う声がするけどそんなことに気をとめていられない。
「なにょは!いいからちょっとこい!」
肝心なところで噛んでしまったけどそんなことすらどうでもよかった。とにかく今はこの場からこいつを連れて行くことが先決だから。
「ふぇっ?ヴィ、ヴィータちゃん?!」
細い腕を握り締め、ずんずんと引っ張ってあたしの部屋に急ぐ。なのはがなんか言ってたけど全部無視した。
普段の倍以上の速さで自室についた。リビングまで来るとあたしはなのはの方に初めて向きを変えた。
「お前、何やってるんだよ!」
なのはのことだから当然何か言い返すものだと思ってた。だけどあたしが怒りに満ちた視線を向けたなのはの顔は、明らかに曇っていた。そしてあたしの言葉にもまったく言い返そうとしない。逆にあたしのほうが二の句を告げられずに困ってしまった。
「…………」
「…………」
「な、何か言えよ…。」
「お弁当作って持ってきたんだけど…迷惑だったかな?」
「迷惑なはずねーだろ。ありがたいけどさ…だったらどうして着替えてこなかったんだよ?」
「だって今はヴィータちゃんのメイドさんだから。」
「確かにそうだけどよ…あんな人のいる場所でそんな服装してたら目立つじゃねーかよ。唯でさえなのはは有名人なんだからよ。それにあたしが周りに何か聞かれたとき説明するのが大変なんだから、ちょっとはその辺も考えてほしーです。」
率直な気持ちだった。別になのはの休暇中に何をしてようと問題じゃないけど、今やってることが明らかに周りから見たら変なことやってるって言う風に見られたって仕方ない。
「そっか…ごめんね、ヴィータちゃん。」
「わかりゃいーです。…あ、その、昼飯食わしてくれるんなら、先に言っといてくれよ。」
「…そうだね。うん。明日からそうするよ。それに出来立てのほうがおいしいもんね。」
「あったりめーだ!」
妙にこそばがゆい気分だったけど、悪くなかった。
「っと、それ、食っていいか?」
「あ、うん!がんばって作ったから、ちゃんと食べてね?」
「おう!」
いろいろやってて時間が余りなかったから味わってる暇はなかったけど、ギガウマだった。
でもまさか、午後からあんなことになるなんて思いもしなかった。