dancin' in the spring

「ということで往人さん、お花見にいこ?」
「却下。」
「そうだよねー。ってそれじゃだめなんだよっ!」
「うぉっ!」
「だから往人さん、お花見にいこ?」
「だめだ。」
「…いいもん、往人さんの昼食をどろり濃厚ジュースにしちゃうもん。」
「わかった。行かせてくれ。」
「にははー。」
…根負けした。っていうか今日のアイツは何だかやけにハイテンション…というより素直すぎるって言うかーまぁ素直なのが観鈴のよい所なんだがーまぁ、なんかこうおかしいんだな。うん。
「じゃあ早速出発しよ?」
「ちょっとまて観鈴。昼飯は?」
「大丈夫、もう持ってるから。ほら。」
観鈴の手には既にバスケットが。やけに用意周到だな。ったく。まぁ、たまには付き合ってやるか。普段が普段だしな。
「じゃあ行くぞ。」
「うん!」
二人は家を出ると、海岸沿いに沿って歩く。堤防の上を歩く観鈴のリボンで束ねた長い髪の毛が、海のそよ風に揺れてふわふわと漂う。
「お前、いつも堤防の上あるいてて飽きないのか?」
「うん。春の海も好きだから。」
「そうか。」
「夏の海も、秋の海も、冬の海も、空も好きだよ。」
「そうかそうか。」
「往人さんひどい。自分でふったのに。」
「別に海がすきかどうかを聞いたわけじゃないぞ。」
「が、がお…。」
頭を一発たたきたいところなのだが、あいにくと観鈴は堤防を歩いている。そのためにいくら観鈴より背の高い往人といえど、頭を一発たたくことは出来ないので、しかたなくスカートから出ている観鈴の白いふくらはぎを一発たたいておいた。それ故に、
「往人さんのえっち。」
とまぁ、こういわれてもそんなに不思議なわけではない。
「堤防の上を歩いているお前が悪い。」
「往人さん、それ屁理屈…」
「ちなみに風が吹いてスカートの中が見えても俺の責任じゃないからな。」
「わっ、わっ。それはだめだよっ!えいっ!」
「おっと。」
「きゃっ!」
慌てて飛び降りる観鈴の体当たり(往人談)を巧妙に避けながらも、彼等の足取りはまっすぐに桜へと向かっている。ただ、その道中が少しだけ、そう、少しだけ、甘く見えるだけなのだ。