それはきっと、雪のせい

にははっ。往人さんと雪遊びー。
上から白のダウンジャケットを着込んだ観鈴が、腕をふって更新する。何も通らない道の上に敷き詰められた白いじゅうたんに、足跡をつけている。
そしてその後ろから、黒尽くめの男、国崎往人が後を追う。
「お前、こんなことして楽しいのか?」
「うん、往人さんと一緒なら楽しいよ。それに、初めてだから。」
そう、初めてだから。うん。何度も考える。雪の上を歩くのが初めてだから。往人さんと一緒に過ごす冬が初めてだから。18の冬が初めてだから。
…そっかー、私、今18歳の冬、なんだ。
もう冬なんて二度と来ないと思ってた。でも、こうして冬が来てる。肌寒い風が私のほほを撫でるし、こうして積もった雪を踏みしめてる。
うん、私、生きてるみたい。
「おい、何立ち止まってぼーっとしてんだ?」
「…へっ?わ、わわっ!」
やっぱり盛大にずっこける運命にあるみたい、私。ううっ、観鈴ちんかわいそう。
でも、いきなり往人さんの顔が目の前にあるんだもん。うん、往人さんが悪いってことで責任転嫁。
「まったく、ほら。」
よいしょっと。ふぅ。
「で、何するんだ。こんな雪の積もった堤防に来て。」
「えーっと…」
「まさか何も考えてなかった、とか言う落ちじゃないだろうな。」
「…実は」
っていってさっと頭を押さえる。あれ?おかしいな。げんこつがふってこない。
「まぁ、観鈴らしいな。」
えっ…往人さんがたたかない?!ひょっとして…
「往人さん、熱ある?」
がっつーん
「ううっ…せっかく心配してあげたのに。」
「それは侮辱って言うんだ!」
怒られた。
「まったく…。」
今もちょっと痛い頭を押さえながら、私はふと冬の海へと目をやった。
「夏とは、違うね。」
「天候悪いから、だろ。いつも晴天の時にしか来なかったからな。」
「うん。」
それはもう、怒り狂った見たいに荒れた海。雪が舞ってるけど、そんな幻想的な風景とはまるでかけ離れた風景。
「まるで晴子のバイク運転みたいだな…」
「うーん、そうかな…」
「ああ。荒っぽいところが。」
今度お母さんに言ってみよ。
それを境にして、会話も途切れた。ただ波が砂浜に打ち寄せる音と、吹雪く音だけが、二人の耳にしか入ってこない。
「くしゅん」
そんな空気を打ち破るかのように、ひとつ、くしゃみ。
「風邪引くぞ。戻るか?」
「うん。」