sunny rain

「おっと、雨かよ。」
家から学校への出かけ、朝慌しくしていたため(てっきり遅刻だと思ったからな)外に気を払っていなかったのだが、雨が降っていた。世の中小雨なら全開で走れと言うセオリーがあるのだが、幸いなことに今日は時間がある。そう、あのセオリーは時間がないときに成立するものだ。時間に余裕があるときは優雅にかさでもさして以降ではないかね。
ということで俺、折原浩平は傘を差して学校に登校中だ。きっと幼馴染の瑞佳が今頃俺を探し回ってるに違いない…。ふっふっふっ、俺もやるときはやるのだよ。
と、そんなことを思いながら通学路を歩いていると、ピンク色した傘が見えた。
「おい、茜。」
振り向いた茜は―なんかちょっと意外そうな顔を最初にして―いつもの口調で言葉を返してくれた。
「おはようございます。浩平。」
「おう。」
「それにしても、今日は早いんですね。」
「ああ。遅刻だと思って慌てて準備したらめっちゃ大丈夫でさ。でまぁ家にいるのも暇だかたら、こうして来たって訳よ。」
「珍しいこともあるものですね。」
なんていいながらくすっと笑みを浮かべるこの里村茜嬢。正直今の笑みにくらっと来ました。父さん、母さん、俺、落ちるのも目前です。
「にしても今日が雨なんてなぁ。」
「昨日から言ってましたよ。天気予報、見てないんですか?」
「いや、見てない。」
「浩平らしいですよね。だから、好きなんですけど。
なんか最後の方がぼそぼそっとして聞こえなかったなぁ。まぁ、いいか。
「それよりも、今日暇か?」
「浩平がそう聞くときは大抵もう決定してます。」
「うっ…」
茜、さすがだ…。
「暇、ですよ。それで今日はどうしますか?」
「ワッフル食べに行くか。」
「浩平のおごり、ですか?」
「…もちろん。」
財布が寂しいのは、男の甲斐性だ。…多分。
「そうと決まれば、早く学校が終わって欲しくなりますね。」
「そういうものか?」
「浩平にはいつものことでしょうけど」
「うっ」
「私には、時々あることなんです。」
「そうなのか?」
「はい。」
茜にそんなことがあるなんて…意外だ。
「…やっぱり、何も思わないんですね。
「ん?」
「いいです。早く行きましょう。」
そういうと、いつの間にか傘を左手に持ち替えた茜が、俺の左腕に白くか細い右腕を絡ませて、ほんのりと桜色に顔を染めていた。