とっさに書いてみた短編とか

「あー、寒いー。凍えて死にそうだよパトラッシュ…」
「準くんそれは色々とまずいかな、うん」
今しがた来た観月が扉を閉める。二人がいるのは特に変哲もないマンションのベランダ。時は一月一日。元旦と呼ばれる日である。
事の発端は紅白で無駄にテンションを上げた純一の一言だった。
『ふっふっふ、ここまで来たなら初日の出とやらも拝んでやろうじゃないか!』
『女の子である私としては徹夜とかいうお肌に悪いことはさけたいかなーとか思うんだよん。』
『じゃあ今から寝るぞ!即!そして日の出前に起きるのだ!』
結局目覚ましで起きたのはかなりギリギリの時間だったりしたわけで、ふたりともどてらにくるまってベランダで日の出を迎えようとする姿はどう見ても寝起き感が丸出しであった。
「はい、観月先輩お手製のコーヒーだよん。」
「やっほーい!観月の入れたものならオレなんでも食える!あ、でもコタツだけは簡便な!」
「朝からテンション高すぎだよ準くん…後それは四足のものでしょー」
眠たいのか微妙にテンションの低い観月から湯気の立つマグカップを受け取ると再び東の空へと視線をやる。地平線上は赤みが射し、日の出が近いことを伺わせていた。
「ふーふー…あちゃっ!」
「アツアツだから気をつけてね準くん」
「敢て後ですか!寧ろそれを先に言ってほしかった!」
「見ればわかると思うんだよん…」
やや呆れ気味の観月からさっと視線をそらし、マグカップを両手で持ち暖を取る。
「後ちょっとだね」
「おう…まぁオレ様にかかれば余裕だけどな」
「そんなこと言いながら私に泣きついてきたのはどこの純一くんかなー?」
「うっ…だ、だが至極当然の選択だと言える!なんてったって観月はオレの恋人だからな!」
「ひゃぁっ」
余りにもべたな台詞を当然といわんばかりに吐く純一。逆に観月の方が顔を赤く染め、コーヒーの水面に視線を移してごにょごにょつぶやいている。
「これで一緒のところか…」
「1年先輩だけどね」
「先輩と後輩という関係がいいんじゃないですか」
それ以降話が続かなくて黙り込む二人。コーヒーをすすりながらじっと朝日が昇るのを待って、そして
「お、観月!でたでた!」
地平線上に太陽が顔を出した。純一はコーヒーの入ったマグカップをベランダの縁に置くと、朝日に向かって手を合わせ、祈った。
「何かお願い事でもあるのかな?」
「うむ。まぁ口に出して言うと願いがかなわないとか言うからまぁ言わないけどな」
そういって観月の方を向き微笑む純一。
「そっか。じゃあ私も何かお願いしちゃおうかな」
同じようにして手を合わせて祈る観月の肩を、そっと純一は抱き寄せた。
「ひゃっ。も、もう、純くん人がせっかくお祈りしてるのに」
「あー、大丈夫大丈夫。ほら観月だから」
「全然言い訳になってない気がするよん」
ちょっと肩をすくめていたずらっぽく微笑む観月。
「さて、一緒に初日の出も見れたことだし朝飯食うかー」
そんな顔を見て照れ隠しに純一は言った。
「そうだね。新年最初の手料理だから腕によりをかけちゃうよん」
陽光に照らされながら、二人の姿は部屋の中に消えた。