かき消された音と 想いを 二度と伝えられなくて

電車のホームに滑り込む寝台特急。見送りに来た時間も、最早真夜中。ホームには雪がうっすらと降り積もっている。
「祐一さん、お見送りありがとうございました。」
「いいんだって佐祐理さん。」
「荷物ももってもらっちゃって…」
「好きでやってるからいいんだって。」
申し訳なさそうな顔をする佐祐理さんも、どこか寂しげな顔をしている。
何となく見つめ合った時に、アナウンスが流れた。
『まもなく、発車いたします。』
佐祐理さんの髪が少しだけ風に舞って、俺にかかる。
「そろそろ…ですね。」
「じゃあ佐祐理さん。また。」
「はい。祐一さんもお元気で。」
「ああ。佐祐理さんも。」
そういって電車に乗り込んだ佐祐理さんが、ふと俺の方を振り返った。
「どうしたの?」
「祐一さん、私――」
何か言おうとしたその声は、発車のベルと、笛と、扉が閉じていく音にかき消されて、俺の元に届くことはなかった。