ある晴れた日に

「こんにちわ、なの。」

 

今日は快晴である。この前、ことみに教えてもらった雲量で換算すると、1か0か。そんな快晴な日に、むしろ外へ出ないのはおかしいだろう。
と、言うことで俺は外にいる。が、外に出たからといってどこかへ行くあてがあるわけもなく、ぶらぶらしてると、ことみの家のほうになぜか来ていた、ということだ。
確かにことみは彼女なのだが、今日はそういった用事があるというわけではない。学校に行けばいつも図書館にいて会えるし(まぁ、杏や藤林、古河や智代、果ては風子までいるような状況にもなったりするが。)、ことみは一人暮らしなので気兼ねせず電話も出来る。そういったこともあいまって、たまには会わない日があってもいいかな、と思っていたのがこのざまだ。改めて再確認させられていた。
そういったことを考えながらことみの家の前を通り過ぎようとしたら、運がよかったのか悪かったのか…俺的には前者だったりするけど、庭の手入れをしていたことみに見つかった。
ということで、今はことみの家の庭で仲良くティーブレイクをしているというのが俺のおかれている立場だったりする。
「庭の手入れをするんだったら、呼んでくれればよかったのに。」
「今日は朋也くんの力を借りるほどじゃなかったの。」
と言うことみは、さっき庭の手入れをしていた時とはうって変わった服装をしている。Gパンに半そでの上から長袖のTシャツを羽織って、麦藁帽子をかぶっていた(ことみいわく、皮膚がん防止なのとのこと。何だかいたってことみらしい理由に思わず笑ってしまった。)のが、今は花柄のワンピース。その性格と反比例しているかのようなスタイルのよさが際立つのは、きっと彼氏としての贔屓目ではないはずだ。…うん。
「朋也くんは何してたの?」
「ん?あー…こんな快晴な日に外に出ないのもなんだと思って、その辺を彷徨ってたらこの場所に来ていたと言うことだ。」
「暇だったの?」
「うっ!」
なかなか痛いところをついてくる。確かに暇だったから何も言えん。
「じゃあ、今日はことみとのお茶会に付き合うの。」
「…仰せのままに。」
何だか拒否権はなさそうだった。でも、いっか。ことみだし。

 

それからことみがお茶会の準備をしているまでの間、俺は庭の手入れをしていた。今日は日差しの割に風が涼しくて気持ちよく、外でティーブレイクをするのにはちょうどいいと、俺とことみは準備の前にそう話した。
「出来たの〜。」
午後三時を回ったくらいに、ことみはそういって盆にいっぱいのお菓子を載せてやってきた。学校があるときはいつも俺に昼食を作ってきているだけに、その味は保証つき。俺の期待は高まる一方だ。
「一つ食べていいか?」
「めっ。つまみぐいはだめなの。」
「ちっ。」
「後でどれだけでも食べれるから我慢するの。」
「おう。」
「じゃあ、お茶を入れてくるから待ってるの。」
「俺も何か手伝うよ。」
「朋也くんは待ってて。」
ちょっと強い口調で言われたのもあって、俺はことみに言われるがままに席に着いた。いったところで、トランスファー係しかないしな。
それから4分後、ことみはティーポットとカップ、ソーサーを盆につんで再びやってきた。
「どうぞ、なの。」
「さんきゅーな、ことみ。」
「どういたしましてなの。」
とりあえず目の前にあるお菓子が気になるので、口に運んでみる。
「うまいな。」
「ありがとうなの。」
ことみの入れてくれたホットティーと、お菓子の甘さがまたちょうどいい感じだった。背もたれに深く腰掛け、時折吹くそよ風を気持ちよく浴びていた。
「いつも朋也くんが来てくれる時のおやつは、ミッディティーというの。」
「あれ?アフタヌーンティーじゃないのか?」
そういえばいつもは、こんなにお菓子は出てないな。大抵紅茶にクッキーとか…まぁ、単品のおやつだったな。
「本来アフタヌーンティーは社交的に…つまり、いろんな人を呼んでやるものなの。だからこうしてお菓子の量も多くなるの。」
「じゃあお八つの時間=アフタヌーンティーじゃないってことか。」
「厳密に言えばそうだし、そうでもないの。」
「…確かに。」
「ちなみにイギリス人は一日に十回近くティーブレイクをするの。」
「そうなのか?」
「early tea,breakfast tea,morning tea,middy tea,high tea,after dinner tea,night teaと、大体大別するのこんな感じなの。」
「あれ?アフタヌーンティーは?」
紅茶を少し口に含んだ後、ことみはまた語ってくれた。
「middy teaとafternoon teaは、似たようなものなの。」
「そうなのか?」
「そうだと思うの。人数とお菓子の多さの違いだと思うの。」
「ふーん。」
なるほど。さすがは一家に一台ことみちゃん。
「と、いうことで今日はアフタヌーンティーを楽しむの。」
「お菓子を作りすぎたと言うのがアフタヌーンティーになる理由じゃないのか?」
「それはいっちゃだめなの。」
予定してない休日もいいなと思う。どうやら今日はことみのお陰でココロまで快晴のようだ。