それはきっと、雪のせい

廊下を走って玄関先で急いで靴を履いて、扉を乱暴に開けて往人の住む離れ(納屋、とも言う)に行こうとする観鈴。だが、ここで、万人の予想通り…
「わっ!」
ぼふっ!
と盛大に雪にキスする羽目になるのだった。
「うー…痛い。しかも冷たい。」
ぱんぱん、と服についた雪を払う。と、急に右手側からよどんだ殺気を感じた。
「あ、往人さん、おはよう。」
「おはようじゃないわぁ!!」
がっつーん!

痛い…。私がきゅーっって気絶するぐらい思いっきりやられた頭は、ちょっとたんこぶになってる。でも往人さんも手を押さえていたそうだったからおあいこおあいこ。…でもやっぱり痛い。
「ここに来て初めて俺は天国を見たような気がする。」
「にははー。往人さんが天国にいけたらみんなびっくりするね。」
あれ…、往人さんなんか落ち込んでる。
「でもこの街も雪降るんだな。」
「私もびっくり。お母さんは20年ぶりとかなんとか言ってたけど。」
「晴子そんなに長くここに住んでんのか?」
「うーん、私と同じくらい、だと思うけどなぁ。」
「…まぁいいか。でも、お前学校は?」
「うん、今日休みだって。」
さっき電話がかかってきた。遠くから来る人とか結構いるから、しょうがない、のかな。
「俺も今日は休業だな。でもこんなときはやることないな。」
「往人さん」
「俺は寝るぞ。」
「が、がお…」
ぽかっ
「ううっ…。往人さんひどい。」
「どうせ雪だるま作ろう、とか雪合戦しよう、だの言うつもりだったんだろ。」
…ばれてた。
でも、往人さんはなぜかじっと、私の顔を見つめて、その後、ため息をついて言ってくれた。
「しょうがねぇな。ほら、行くぞ。」