紅につつまれて

「言ってくれると嬉しいな」
そういって、往人の目を見据える。いつの間にか木々のざわめきしか聞こえない。彼らの足は止まり、その傍らでは、風に吹かれた紅葉が、静かに散っていた。
ただ、そのまま伝えるには、少し恥ずかしすぎる。そう、往人は思う。『お前と、ずっと一緒に入れたらいいな』なんてことを。
そして、打開策をふと思いつく。
「なぁ、いっせーのーで、で言い合わないか?」
「えっ?」
「俺もお前が何を祈ったのか聞きたいからな。結構熱心に祈ってたし。」
「うーん…わかった。」
「じゃあいくぞ。いっせーので」
「「お前と(往人さんと)一緒にいたい」」
二人とも、きょとんと目を合わせた。そして、同時にふきだした。
「なんだ、お前もか。」
「往人さんもじゃん。」
二人して、笑いあった。ずっと、気が済むまで。

帰り道、俺はなぜか観鈴と手を繋いで歩いている。もうすぐしたら、みんなのいるところにたどり着くだろう。
「にははーっ、往人さんとお散歩ー」
「御気楽だな、お前。ほら、もうすぐしたらみんなに見られるから、手離すぞ。」
みんなに見られたら、なんていわれるかわかったもんじゃないし。下手に佳乃が騒ぐとメス飛んでくるし、美凪が何かしでかすとみちるが跳んでくるし。やれやれ、どうしてこうなっちまったんだか。
「…じゃあ、もう少し、このまま。」
そう言って、観鈴が立ち止まった。つられて、俺も立ち止まる。
「どうしたんだ?」
「て、繋いでいたいから、もう少しだけ…いいかな?」
観鈴ちん、わがままだね。なんて、ぼそっとつぶやいて。
「じゃあ、もう少し見て回るか。」
「えっ、わっ、往人さん。」
それに答えて、俺は踵返してもう一度森の中へと歩き出した。観鈴の手を、しっかりと握り締めた。
俺達を祝福してくれているのか、笑ってくれているのか、紅葉の葉が風に揺れて、鳴いた。