resign myself to the "virtual reality"(6)

クリスマスが街を彩る。学校も冬季休業に入った今、私が行くところは、決まって塾。今日も、家路を急ぐ人々にまぎれて、私は塾の近くの駅へと歩いていた。
「あれー?ひょっとして霧佳?」
後ろから、そう声をかけられた。振り返った先には、ショートに、薄黄土色のダッフルコートを身に纏った、私の親友、坂崎祐理がいた。
「やっぱり霧佳だー。久しぶりー。」
「祐理も変わりないねー。」
「お互い忙しいからなかなか会えなけどね。」
そう言って、祐理は微笑んだ。
「塾の帰り?」
「うん、そう。祐理も?」
「まぁ、そんなとこかなー。」
電車の中での祐理との会話も久しぶり。三年になってから、めっきり会う機会も減っていっただけに、こうしてしゃべれるのも一入の喜び。
「で、彼氏とはどうなの?」
そして、祐理は、唯一私のネットを知って、理解してくれている人。
「え?あ、うん、…変わらない、かな。」
「もう、そんなこと言っちゃってー。ほんとはらぶらぶなんでしょ?」
その言葉に、どうしても『うん』とか『違うよ』とか、うまく返せない。
「…あー、聞いちゃいけなかった?」
「…え?そ、そんなことないよ…。」
強く言い切れない自分がなんとなく悲しい。
「なんかあったの?」
「…年末にこっち来るんだって。それで、ちょっとでもいいから会えないかって。」
『まもなくー夕張が丘ー、夕張が丘ーお降りの方は、手荷物…』
「へー、そうなんだ。聞きたいとこだけど、私降りなきゃ。じゃあまたね、霧佳。」
「うん、じゃあね。」
再び動き出した車窓を見つめる。そこから、自分の家の最寄の駅まで、漠然とした想いをただ抱えているだけだった。それがなんなのか、祐理に聞いてみたかった想いを。