ごめん、特にタイトルとか決めずに書いたwww

誰もいない部屋に二人ではいると、相変わらず湿った木の匂いが漂う。それに耐えかねて瑛里華が最寄の窓を開け放つと、多少和らいだような気がした。
「まったく、10月だというのにまだ夏のような気分がするわね。」
「きっと地球温暖化のせいだろ。」
「孝平にしてはやけに現実味のある答えね。」
「オレを伊織さんと一緒にするな。」
「…それもそうね。」
笑みを浮かべた瑛里華にこっちも笑みを返していたら、この部屋の扉が空いた。
「すいません、遅くなりました。」
「お疲れ様、白。」
「白ちゃんお疲れ。」
「支倉先輩も瑛里華先輩もお疲れ様です。」
これで後期生徒会役員がすべてそろったのだ。人数の少なさについては否定しきれないが。
「瑛里華も支倉君もいることだし心配ないだろう?」
「まぁ…って何故あなたがここに?」
「ほら、よくあるじゃないか。引退した先輩がかわいい後輩を思って部活にちょくちょく顔を出すことが。」
「征一郎さんならともかく、兄さんじゃ厄介者扱いね。」
うんざりした顔を浮かべる瑛里華だが、嫌がってるわけじゃないようだ。
「ははぁん、さては二人の蜜月空間を邪魔されるのがいやなんだね?」
「ええっ、それは、あの、その…」
白ちゃんが顔を真っ赤にして慌てふためくのを尻目に、瑛里華とオレは拳を握り締めて息ぴったりで告げた。
「「やっぱ帰れ。」」
その日、ずぶ濡れで寮に帰宅する伊織さんの姿を見て、寮が大パニックに陥ったらしいが、新寮長の陽菜がうまく混乱を制してくれたらしい。その夜、かなでさんの興奮した陽菜賛美歌を聴くことになったのは、まぁ仕方ないのかもしれない。

入学してからの半年はまるで大捕り物を演じたかのようだった。長年の懸案がすべて片付き、再び生徒会に入った当初の明るさが戻ってきたのは嬉しく思う。その中で変わった関係の中でも、特にオレにかかわってくるのがやはり瑛里華との関係だと思う。オレを変えてくれた瑛里華と、瑛里華を変えたオレ。人生のターニングポイントを語る機会があったら是非語りたい場面でもある。
「早速仕事よ。兄さんと征一郎さんが抜けた分のしわ寄せが来るけど、このメンバーなら大丈夫だって!」
「おう、任せとけ。」
「あ、足手まといにならないようにがんばります!」
「よし!じゃあ始めましょうか。」
「っていっても、後期は何があるんだ?大方大きなことは前期にやったような気がするが…?」
体育祭に文化祭って言ったら学園生活の二大行事なような気がする。そんな様な大きな行事が後期にももちろんある…んだろうが、オレはまだ知らない。
「後期の大きな行事は、クリスマスパーティと卒業生を送り出す会があります。」
「クリスマスパーティか…確かに礼拝堂にシスターがいるぐらいだから、あってもおかしくなさそうだな。」
「あら、近年は敬虔なクリスチャンでなくてもお祝いしてるわよ?」
会長の椅子に座って書類の決済を始めた瑛里華が言う。そろそろオレも仕事を始めなくちゃな。
「まぁそうだが、普通クリスマスパーティなんて学校で盛大にはやらないな。」
「そうなんですか?」
「少なくともオレの経験上はそうだったな。」
そういいながら瑛里華を見ると、自信満々な笑みを浮かべてこう言い放った。
「それならクリスマスパーティの実行委員長は孝平に決まりね。」
…ちょっと待て。
「おいおい、それは瑛里華の仕事じゃないのか?」
「あら、兄さんを見ていればわかるでしょ?」
確かに先生や近所との調整に出なきゃいけないって言うのはわかるけど…。
「それなら白ちゃんに任せた方がいいんじゃないか?来年やるのは白ちゃんなんだから。」
「私もそれは考えたんだけど、やっぱり2年連続して同じ人がやるとマンネリ化しそうじゃない?だから今年は白には孝平の補佐をしてもらいたいんだけど。」
「え、ええっ!私が…支倉先輩のお手伝いを…?」
白ちゃんと目が合う。確かに瑛里華の言うとおり、オレの手伝いをしてもらえば来年何かの参考になるかもしれない。オレがそこまで参考に足る人物かどうかはともかくとして。
「確かに瑛里華も忙しいし、来年のことを考えるとそれでいいのかもしれないな。白ちゃんはどうだい?」
驚いていた白ちゃんも、やがて意を決したように口を開いた。
「その、色々とご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくおねがいします。」
そして、ぺこりと頭を下げた。
「なら決定ね。まだ2ヶ月以上あるけど、油断しちゃダメよ。」
文化祭や体育祭のときのことを思い出す。大丈夫、絶対にうまくやれるはず。
根拠はどこにもなかったけど、何となく、そう思えた。