紅につつまれて

さて、佳乃を先頭にして歩いている、通称かのりん探検隊はどこへ向かってるのかもわからない。っていうか気の向くままに違いない。…とりあえず、美凪がいなかったら不安増大、だな。
「ここ、広いんだねー。こんなに紅葉があるなんて。」
と、観鈴が言うように、歩いても歩いても紅葉。360度どこを見ても紅葉、だ。
「…この辺は広葉樹林帯なんでしょうね。」
「が、がお…よくわからない。」
とりあえず晴子との約束どおり一発ひっぱたいておく。
「い、痛い。」
たたかれた部分を押さえながら歩く。
「…簡単に言うと、こうやって色づく葉を持ってる木は大抵広葉樹ですね。」
なるほど。一つ勉強になった。
「もー!三人だけで仲良くしないでよー!」
「お前が先走りすぎるのが悪いんだろうが。」
「うーっ。おねぇちゃんにいいつけ「すまん、俺が悪かったからそれはやめてくれ」」
なんだか、一部からの視線が妙に痛い気もするが、背に腹は変えられん。
「…ひょっとして、佳乃さんのドレイ?」
「え、ええっ?!」
「が、がお?!」
やっぱり、晴子との約束どおり、一発ひっぱたいておいた。
「ど、どうしていつも叩くのかな。」
「それが晴子との約束だからな。」
「うぅ…最近お母さんと往人さんが結託してるよぉ。」
「佳乃の真似は似合わないぞ。」
「…らぶらぶ?」
「断じて違う」
「こらー!かのりんをのけ者にしないでよぉー!」
ふむ…誰かを相手にすると誰かがのけ者になるな。人付き合いとはいと難し。これ如何にすべきか。
「わわっ、往人さんが難しいこと言ってる。観鈴ちんびっくり。」
「お前、俺が相当頭悪いと思ってるのか?」
「え、えーっと…」
観鈴ちゃんに美凪ちゃんに往人くーん!こっちきてー!」
いつの間にか進んでいた佳乃が、手を振って俺らを呼んだ。