Starlight Rain

「え…えーっと、それはどういう意味かなぁ。」
「いや別に…。額面どおりの意味だが。」
空を見上げていた観鈴は、往人のほうへと顔を送る。当の往人は相変わらず空を見上げて黙ったまま。
「うーん…私は、幸せだよ。だって、隣に往人さんがいてくれるから。」
にははっ。そう笑って答える。
「ずっと寂しい思いをしてきたから、ずっと一人ぼっちだったから、だから、今隣に誰かがいてくれるって言うのは、すごく嬉しい。」
それが自分が大切に想う人なら、なおさらのこと。
「往人さんは、私のことどう思ってるのかなぁ。」
腕を組んで考える往人。そして、再び空を見上げる観鈴
「そうだな…」
…考えて、ありきたりな言葉しか浮かばない。なんてことは、よくあること。それがなんとなく言いづらいのも、よくあること。
「往人さん?」
「あー、その…だな…」
「なに?」
「…だぁー!つまりこういうことだよ!」
観鈴の左手をつかんで思いっきり体を引き寄せる。往人の体で観鈴を受け止めると、そっと抱きしめた。
「わ、わっ!ゆ、往人さん?!」
ばたばたと手足を動かす観鈴。それを意に介せず、ぎゅっと抱きしめる。
「こういうことだよ。」
今見上げると、そこは満天の星空の変わりに、きれいな少女の驚いた顔。大切に思っている少女の、かわいい顔。
「え、えーっと…にははっ。こんな時に…言いたい言葉が…出てこないよ…」
往人の胸に顔をうずめる。そっと、そのポニーテールの髪の毛を、撫でた。
「俺は、お前のこと一番大切に想ってる。」
くぐもった声が、その言葉に答える。
「私も」
「おい、観鈴?」
「にははっ、なんでもない。」
顔を上げると、目に浮かんでいる涙。少しだけ充血した、目。
「泣き虫だな。お前って相変わらず。」
その涙を解いた手でぬぐうと、そっと体を引き寄せた。
「んっ…」
甘い、口づけ。
夜空の星たちは、新月の丘を照らす。淡い光に包まれて、二人、走り出す。
未だ見ぬ、未来へ。

「ただいまー、やっとかえったでー。…観鈴ー?」
明かりをつけて室内に入る。机の上には、一枚のメモ。
「…そっか。まぁ、そんな日もあってええな。」
荷物をそこら辺に放り投げ、酒とコップを持って、ちゃぶ台の近くに座る。
そして、最早何もない空を見上げる。
「変わったな…。何もかも。」
そっと、空に杯を掲げた。