Starlight Rain

「これは人類の飲み物じゃない!」
びしっ、とパックを指差して力説する往人。そしてその横では、ストローをさしてちゅーちゅーとおいしそうに飲む観鈴の姿。
「こんなにおいしいのに…。」
それはお前の舌がおかしいだけだ。そうつっこもうとしてなんとなく、やめた。
「というわけで代わりの飲み物は?」
「え…?ないよ。」
がつん
「ど、どうしてそこでたたくかな。」
「まったく。」
そういいながらも、観鈴が作ってきたサンドイッチを綺麗に平らげるのであった。

「うわぁー、綺麗だねー。」
満天の星空−しかも今日は新月でよく見える−を見上げて、観鈴は言う。弁当を片付けながら見上げる空。つい、その手も止まってしまう。
「だな。」
といいながらこちら、亭主関白を味わうかのように、観鈴が広げてくれたビニールシート(実は恐竜柄だ)に寝転んで、星を見ている。
「ねぇ、往人さん」
「なんだ?」
「星の話って知ってる?」
横を向くと、座って星を見上げている観鈴の横顔。
「知らないな。というか、星を見上げるときは大抵寝る前だしな。」
野宿したときの空をなんとなく思い出す。あの時、空を見てもなんらうれしいことはなかった。ただ、星が綺麗だった…それだけだ。
「にははっ。往人さん旅人だったもんね。」
「そうだな…」
だがそれも終わった話。もう、風に吹かれるままに旅をする…なんてことはない、と思う。…こいつがいる限り。
「私も昔聞いたんだけどね…」
そういって観鈴は話し始める。観鈴は楽しそうに、時には悲しそうに語る。その喜怒哀楽する顔を、往人はじっと見つめていた。話なんか忘れて、ただ、ずっと。
「…っていう話なんだ。…あれ?往人さん?」
その焦点が合っていないような目を見つめる。すると往人は今気づいたように観鈴のほうへ向けていた顔を空へと戻した。
「どうしたの往人さん?熱でもあるの?」
といってぐっと顔を近づけてくる観鈴
「い、いや、そ、それはないぞ。うん。」
動揺丸見えでも、観鈴には気づかれなかったようだ。観鈴も一つ頷いてまた空へと視線を戻す。
そして、今の表情のことを確かめたくて、つい聞いてしまう。
「なぁ、観鈴
「ん、なに?」
「お前、今幸せか?」