resign myself to the "Virtual Reality"(3)

これでよし、と。
心の中で一つつぶやいてケイタイを閉じる。まだ朝のチャイムはなっていなかったけど、その後すぐなった。
授業が始まってからは、サイレントモードにしておく。机の中にしまってあるから、時々やってきた彼からのメールが、ランプを通じて自己主張する。 そんなときは横のサブボタンを押してとりあえず”わかった”と言っておく。
放課になったらメールを返して、メールが来て、メールを返して、授業になって…毎日、授業とか、友達の会話に違いはあるけど、根本的な私の学校での行動はこんな感じかな。
別に、学校の友達と何かすることがつまらない訳じゃない。
学校の友達は、このことを知らないのだ。
ネットの世界のことを、別に現実に持ち込もうなんて思ってない。ネットはネット。現実は現実。それを分けて生活してる。もちろん、楽しみも別々。
ただ、今の楽しみの比重が、彼とのメールに集約されすぎてるだけ。
友達といても、楽しいことに変わりはないけど、やっぱりかなわない。ネットが現実になっているから…なのかもしれない。

 

学校から帰って、ケイタイを充電器にはめる。学校で使いっぱなしだから、電池の減りも早い。
そのケイタイを横において、私は参考書を開いた。もう、センターも近い。
ノートを開いて、その上に鉛筆を滑らせる。彼もそのことに気を使ってくれているのか、はたまたバイトか大学の講義で忙しいのか知らないけど、学校から帰ってきてから夜11時近くまでメールが返ってこない。
私は、11時が待ち遠しくて、11時に恋焦がれながら、勉強に熱を入れる。意識を、『彼』から目の前の問題に移した。

 

11時が過ぎた。今日の勉強も一段落しているし、彼からのメールが来ないので、私はお風呂に入る準備をしていた。
いつもの着信音がした。無造作にケイタイを取って、開いた。
「えっ…、電話……」
少し手を震わせながら、私はスイッチを押した。
「はい…、みなです。」